廓文章・おきさ

なんと申しましょうか、吉田屋のおきさを、去年の春から今年にかけて、同じ歌舞伎座で三度も勤めさせていただく事になりました。役作りに関しては、以前お話しさせて頂いた通りで、あらためてお話しすることもないのですが、新しく読んで頂いている方のために、少しお話しさせていただくとすれば、まず吉田屋と云う店は、心中天網島の河庄や恋飛脚の井筒屋などより、はるかに格式のある店なので、そこの女房となると、それなりの風格が必要です。ただそういう事を意識し過ぎると情に乏しくなります。物乞いのような姿で訪れた伊左衛門に対し、喜左衛門おきさ夫婦が暖かく接する事により、吉田屋の幕全体が、はんなりと楽しい雰囲気に包まれるのです。それも押し付けでなく、いつも云うところの自然体でなければなりません。ただ、何度演じているお役でも、つねに新鮮な気持ちで勤めないと、芝居がこずんでしまいます。とにかくお客様が何度ご覧になっても『楽しい吉田屋〓』にしたいと思っております。

プロフィール

片岡秀太郎

Author:片岡秀太郎
二代目 片岡 秀太郎
昭和16年9月13日
大阪府大阪市生まれ
屋号は松嶋屋
定紋は七つ割り丸に二引、替紋は追いかけ五枚銀杏
本名は片岡 彦人(かたおか よしひと)

十三代目片岡仁左衛門の次男
1946年(昭和21年)10月京都南座で『吉田屋』の禿役で本名の片岡彦人で初舞台
1956年(昭和31年)3月大阪歌舞伎座の『河内山』の浪路で二代目片岡秀太郎を襲名

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