一文字屋お才

九月巡業の後、二日間のお休みをいただいて、今日28日から御園座の稽古に入りました。初日までの稽古期間は三日間。皆さんは『そんなに短くて!?』と驚かれますが、私達歌舞伎役者は何度か手掛けている役が多く、キャスティングに合わせるために稽古する場合が多いのです。もちろん初役(はつやく…初めて演じる役)の役者もいますか、その場合は事前に先輩の教えを受け、書物、資料などで研究を重ね、いつ初日があいても良い状態で稽古にはいるのです。十月の御園座では、私は『暇名手本中臣蔵・六段目』に登場する『一文字屋お才』をつとめます。何度か演じていますが、仁左衛門の勘平では初めてです。京都・祇園町の置屋(遊女や芸妓を抱える店)の女将ですが、原作では才兵衛と云う置屋の主人を歌舞伎では女将に置き換えています。ともすると重く成り兼ねないところを、男性を女性に置き換えて、はんなりとした雰囲気を醸し出す、歌舞伎独特の演出です。酸いも甘いも噛み分けたお人よし。情もあり、それでいて人の扱い方も上手く、仕事はし
っかりこなす女将で、私の好きなお役です。はたして自分が
思ってるような『お才』を演じられるかどうかわかりませんが、実際に舞台に出てしまったら、あまりいろいろ考えずに、いつもいつも云うところの『自然体』で勤めたいと思っています。ところで九月巡業で『おえん』を勤めた私が暮れの顔見世では『梅川』を演じ、今回『お才』を勤める私が、初春の松竹座で『おかる』を演じます。この四役を演じる役者はいるでしょうが、僅か五ヶ月の内に、それも年増から逆に若い女性を演じた人は多分いないのではないでしょうか…。

プロフィール

片岡秀太郎

Author:片岡秀太郎
二代目 片岡 秀太郎
昭和16年9月13日
大阪府大阪市生まれ
屋号は松嶋屋
定紋は七つ割り丸に二引、替紋は追いかけ五枚銀杏
本名は片岡 彦人(かたおか よしひと)

十三代目片岡仁左衛門の次男
1946年(昭和21年)10月京都南座で『吉田屋』の禿役で本名の片岡彦人で初舞台
1956年(昭和31年)3月大阪歌舞伎座の『河内山』の浪路で二代目片岡秀太郎を襲名

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